拂塵 仲合、同盟会話
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仲合会話
千山暮雪
空と一体になって、浮世離れした彼の姿を一層引き立てている。
雪が体に触れる前に、彼はそれを払った。
雪は一向に止まないが、彼の服にはちっともついていない。
私は思わず彼に近寄ってしまった。
無剣:こんなに綺麗な雪、服についてもいいんじゃない?
わざわざ払うことないでしょう?
拂塵:そなたに関係ない。
彼の視線は氷みたいに冷たくて、私は全身に寒気が走った。
ふと気づくと私の体には雪がいっぱい積もっていた、ひとつを取って掌に置き、その澄んだ六角形の花の形の雪が融けるのを見る。
無剣:いわゆる「凡そ草木の花は多く五出す、雪の花は独り六出す」、「未央花」という名前もあるし、
雪を嫌う理由を考えにくいわ。
拂塵:未央花?
無剣:果てしない空から舞い降りてきて、どこに往くかも知らない。
自由に飛び舞う、まるで無尽のような、純潔で美しいものとは思わない?
拂塵:元々純潔であっても、落ちた時には既に世俗の穢れに染まってしまった。そんなものに道袍を汚されては堪らん。
無剣:別に仙人じゃあるまいし、俗世で暮らしている身よね、
あなたはその世俗の穢れとやらを染めないってわけ?
拂塵:そなたと違い、修道の身だ。
無剣:修道のどこがいいか分からない。
俗世に愛想を尽かした人たちがやることでしょう?
私の反論を聞いて、軽蔑するかのように拂塵は眉を顰めた。
拂塵:屁理屈だ。
幼い頃から修道を始める人間も大勢いる、俗世とどんな関係がある?
無剣:修道って「清淡寡慾」を言われたんじゃないの?
幼い頃からそうすれば、若くして俗世に愛想を尽かしたってことか?
拂塵:修行に身を捧げるなら、もちろん俗世とは断ち切るべきだ。
無剣:つまらないとは思わない?
拂塵:貴様と話すのは時間の無駄だ!
排塵は鼻を鳴らし、その表情は更に硬くなった。
無剣:な、何も言わないから、一緒に雪でも見てていいでしょう?
拂塵:断わらせてもらう。
挑塵は微かに眉をひそめて、その場から立ち去った。
無剣:はぁぁ……なんて冷たい人、もっと喋りたいのに。
遠くに歩んでいく背中を見ながら、私はため息をついた。
分かりきったこと
夢から醒めると、焚火はいつの間にか消えている、
暗闇がまだ広がっていて、眠気が一気に吹き飛んだ。
周りを見渡すと、少し離れた場所に拂塵が一人で立っていた、
無言で夜の雪山を見つめている。
気になってしょうがない、私はこっそりと近づき、彼と同じように雪山を眺める。
無剣:この雪山がそんなにお気に入り?昼も夜も、眺めつづけるなんて。
予想外に声を掛けられて、拂塵は横目で私を見ていた。
拂塵:喋っても無駄だ。
無剣:そんなことはないわ、まだ話もしていないのに、無駄かどうかは分かるはずないでしょう?
彼は一瞬言葉に詰まり、フンとまた冷たく笑った。
また相手にしてくれないと思ったところ、彼が口を開いた。
拂塵:……昔、ある人が歌っていた歌謡がある。
私の好奇心に火がついてしまう。
無剣:どんな?歌ってくれない?
案の定、私の言葉に彼は目を白黒させたが、
拒むことはなく、本当に歌い始めたのだ。
拂塵:世に問う、情とはなんぞや、生死を顧みずまで。南北に飛びまわし、寒暑を経って続け。
快楽の趣き、分離の苦しみ、痴情の男女は尽きぬ……
拂塵:飛び越えるよ、千山の雪を、万里の雲を、一人のために……
まるで吸い込まれるように、私はボッーとしていた。
彼の歌声がこんなに素晴らしいとは思わなかった。
拂塵:なに?
彼の顰めた眉を見て、私は慌てて説明した。
無剣:歌声があまりに美しいから、言葉も出なかった。
拂塵:ねぇ……
拂塵の顔が一瞬赤くなった、ほんの一瞬だけだけれど。
無剣:拂塵、あなたさっき……
拂塵:フン。
無剣:えっと……
さっきの歌は、どういう意味なの?
拂塵:二羽の雁は捕まえられ、一羽はうまくに逃げだが、もう一羽は殺されてしまった、逃れたほうの雁はそれを見て、自ら地面に衝突し命を絶ったって話だ。
無剣:きっと夫婦ですよね?
死んでも一緒に、なんて深い愛情なの……
突然拂塵の性格を思い出し、また軽蔑されるかと思ったが、
彼は意外にも微かなため息をついた。
拂塵:なんの意味が有る?結局両方とも死んでしまった。
その時冷たい風がフッと横切り、私は思わず身震いをした。
でも、この冷たい人が歌ったり喋ったりしてくれた以上、
いくら寒風に吹かれてもいい気持ちになれるよ。
私は我慢できずに笑っていた。
拂塵:無剣、何がおかしい?
無剣:こんなに喋ってくれたことが嬉しいだけ。
あなたもずっと冷たいわけじゃないのね、もし冷たい言葉だけ投げかけられていたら、もう凍死してしまうと思っていたから。
拂塵は一瞬動きを止め、また眉をしかめ、足早く立ち去ろうとした。
私は慌てて彼を呼び止める。
無剣:ちょ、ちょっと待って、まだーーきゃっ!
言い終わらないうちに、彼は自分の道袍を私に放り投げた。
私は道袍を抱きしめ、その体温を感じながら、立ち去った彼の後ろ姿を見つめて、その場に立ち尽くした。
情というものは
拂塵:無剣!触るな!
花に手を伸ばした瞬間、
後ろから怒鳴り声が聞こえた。
慌てて動きを止めて、振り向くと、不機嫌な顔で私を睨みつける拂塵がそこにいた。
無剣:どうして?なんでダメなんですか?
拂塵:この花は危険だ、触ってはいけない。
無剣:この花のことを知ってるの?
拂塵は首を横に振る。
拂塵:いや、ただこの絶情谷は「情花」という花に覆われてると聞いていた、
その棘には猛毒があり、刺されると死んだほうがマシと言われる程だ。
無剣:「情花」?不思議な名前、その意味はなんですか?
拂塵:知るものか、猛毒があるということは確かだ。情と名付けた以上、触ってはいけないということだな。
彼の注意する様子を見て、私はただ首を横に振る。
無剣:情の何が悪いの?こないだ歌ってくれた歌も、情に殉ず雁の話でしょう?
雁でさえ深い愛情があるのに、人間は尚更でしょう?
拂塵:風月無情、悩みの種になるだけだ。
彼の冷たい態度に、思わず文句が出る。
無剣:体験したことないくせに……
拂塵:悩みと分かる以上、わざわざ関わるバカがいるか。
それを言うや否や、彼はさらに眉をしかめる。
拂塵:悩まされるのなら、情からになんて触れないほうがいい。
無剣:経験もせずに、悩みなんてと断定できる?
情が怖いから、避けているだけでしょう。
拂塵:もう……!
私の挑発に怒りが出たものの、拂塵はいつものように立ち去らず、その場に立ち尽くしている。
無剣:まあまあ、別に言い争いはしたくないから。
私はしゃがんで、少しだけ花に近寄る。
無剣:嗅いでみてよ、なんていい香りなの、きっと花も甘いと思うわ。
私は細心の注意を払って一枚の花びらをとって、口に入れた途端、甘さが一気に広がった。
私はもう一枚を取って、拂塵に差し出す。
無剣:棘が毒があっても、花びらがこんなに甘いよ。
あなたの言ったことと全然違うじゃない?
拂塵は少し躊躇したが、ついに花びらを受け取って、口に入れた。
少々躊躇と戸惑いがあったものの、彼の表情が次第に緩む、花びらの甘さを味わったんだろう。
無剣:どう? 私の言った通りでしょう?
目を伏せて考え込んでから、彼は呟いた。
拂塵:体験せずに……結論を出さん……と
孤影は誰に
彼に近寄ろうした時、ふと古墓での光景を思い出した。
拂塵:邪魔をするな!
拂塵:これ以上邪魔をするなら、容赦はしない!
金鈴:拂塵師兄!正気か?!同胞に手を出すなんて……!
拂塵:同胞か……邪魔者を……殺……せ……すべて……ころ……
金糸:拂塵師兄……貴方に私たちと戦う気はありませんでしょう?
拂塵:氷魄!
氷魄:拂塵師兄……?
拂塵:もういいだろう。いくぞ
私は手を上げ、拂塵の額にある汗を拭こうとしている。
拂塵:無剣、そなたは……なぜ……
無剣:なに?
拂塵は目を伏せて黙りこんだ。
無剣:気分はどう?
拂塵:もう無事だ。
言い方は硬いが、虚弱さを隠せない。
無剣:無理しないで、さっきは本当に危なかったんだから……
みんな合わせて止めたから、こうしてあなたは正気を取り戻したんだよ。
拂塵の唇はきつく結ばれ、ようやく言葉を絞り出した。
拂塵:助太刀、感謝する。
無剣:私はいいから、同門の二人にお礼を言うべきよーー
金鈴と金糸はすごく心配していたよ。お互い人情の厚い方でしょう。
その言葉を聞いた瞬間、拂塵は再び眉をしかめる。
拂塵:人情?ふ、私の前でそんなバカバカしい言葉を口にするな。
その冷淡や皮肉が混じった言い方にびっくりさせられた。
無剣:何か因縁でもあったの?それとも彼らのことを信じていないとか?
拂塵:同門だからって、「人情」があるなんて信じない。
無剣:じゃあ私は?ただ友達になりたくて、一緒に喋ったり、共に困難を乗り越えたり……
そんな私のことも信じてくれない?
拂塵:信じる。
あっさりと答えた、思いも躊躇もなく。
無剣:本当?
拂塵;本当だ……無剣、そなたは違う。
無剣:つまり、あなたの心の片隅に、私がいるってこと?
拂塵:いや…
心が曇ったように、私は少し落ち込んだが、突然彼の声が響いた。
拂塵:片隅だけじゃない。
曇った心がたちまち雨上がり、明るい陽射しに満ちた。
無剣:もう!いつまでその氷の仮面をかぶり続けるつもり?
拂塵:氷の仮面?
無剣:な、何でもない!
あの歌、もう一度聞かせてくれる?
話題を変えるのが下手過ぎるせいか、拂塵はわかったような顔で私を見つめている。
拂塵:このアホ。
彼の口元に笑みが浮かんでいる。
その瞬間、まるで湖を覆う氷が溶け、春風が通り過ぎ、さざ波が立っている。
無剣:歌って、一回だけでいいから、お願い。
拂塵:分 か り ま し た。
拂塵:世に問う、情とはなんぞや、生死を顧みずまで。南北に飛びまわし、寒暑を経って続け。
快楽の趣き、分離の苦しみ、痴情の男女は尽きぬ……
拂塵:飛び越えるよ、千山の雪を、万里の雲を、一人のために……
拂塵の歌が風に乗って昇っていく。
空を見上げると、白い雲が蒼穹の彼方まで広がって、その神々しい姿は、まるで彼のようだ。
同盟会話
○○の拂塵:誰だ?私の修行を邪魔するのは。
○○の拂塵:ふん、いくら話しても無駄なようだな。
○○の拂塵:ほっといてくれ。
○○の拂塵:私の武功は同門より遥かに強いのにもかかわらず。
○○の拂塵:なぜ師は教えてくれるのだろうか…
○○の拂塵:まさか、浮き世にまだ未練があるゆえか?
○○の拂塵:古墓の武功は想像を遥かに超えるほど奥が深い。
○○の拂塵:師匠がえこ贔屓さえしなければ、門派を統括するの私だったのだ。
○○の拂塵:しかし…あいつもそこそこやるな。
判詞
二句目 紅花のような火の海にただ一羽の雁が鳴く
三句目 人間界の繁華さを避けながら
四句目 煩悩の塵を払って寂しく進んでゆく
五句目 血にひそめて心が乱れ
六句目 銀糸を涙に染めて怨みなお多し
七句目 思いが人々に理解されず
八句目 専一を無情だと誤られがち
コメント(1)
コメント
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・誰だ?私の修行を邪魔するのは。
ふん、いくら話しても無駄なようだな。
ほっといてくれ。
・私の武功は同門より遥かに強いのにもかかわらず。
なぜ師は教えてくれるのだろうか…
まさか、浮き世にまだ未練があるゆえか?
・古墓の武功は想像を遥かに超えるほど奥が深い。
師匠がえこ贔屓さえしなければ、門派を統括するの私だったのだ。
しかし…あいつもそこそこやるな。0
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